なんでもありと言い切れるほど悟ってない。…そういう俺はガキなのか? 迷いこんだ店の隅に何かフェイクファーの豹柄やら水色やらが見えて、奴も俺もそういうのが好きなので、俺はつい近寄ってしまった。 …すぐに後悔した。欲しくてたまらない。3000円もする。ポケットには帰りの交通費の1000円しか残っていない。内ポケットから銀行口座直結のカードをひっぱりだす。なさけない。店の売り子は爽やかに会計してくれる。…せめてもの慰め。更に情けない。 部屋に戻ると奴は耳をつけて待っていた。…そうだ、水色やピンクや豹柄なんかありがちだが、この耳と同じ柄のが珍しかったんだ、そう言おう。…でも勇気がでない。なにやら絶体絶命。 「どうしたんですかー。」 のんびりと奴が言う。俺が黙っていると勝手にポケットに手をつっこんでくる。くすぐったい。 「…あ、なんか買ってきましたね?何でしょう…あけてみます。」 独り言のように奴は言う。…心臓がせりあがって来る。 「わあ…可愛い、耳や尻尾とお揃いの三毛ですね。こんな柄があるなんて知りませんでした。どこで買ったんですか。」 しどろもどろに俺は答える。 「…ちょっと変な店に迷いこんで…」 すると奴はにっこりしてこう言った。 「ああ、あそこの駅前のアダルトショップ。そうですか。今度一緒に行きましょうね。あそこにはまだ他にも欲しいものがあって…」 …何が知りませんでしただ、くそっ。 「…あなたもやっとエスプリが分かるようになってきましたねえ…」 …しるか。そんなこと。 うちの巨大な三毛猫は、フェイクファーのついた手錠を早速自分の左手と俺の右手にはめ、耳をつけた頭で俺の肩にごろごろと甘えた。ほっとしたような腹立たしいような気持ちで交わす口づけは、それでもやっぱりいつものように濃く、甘い。 |
いきなり爆走して他のお客をびっくりさせてはいけないので、こっそり爆走。昼にやってたワイドショー(??)で紹介されていた手錠があまりにペントハウスだったので、突然の号外。 |