ヒュウガがラボににこもって5日が過ぎた。
「心配いりません」
と、珍しく本人から定時連絡が入っていたので、心配をしていたわけではないのだが、 なんとなく落ち着かなかった。
「カール、…おまえさっきから1時間おきに部屋ぐるぐる歩きまわってるけど…」
シグルドに青い目で見上げられるまで、自分の奇行に気が付かなかった。
指摘されるといささかばつが悪く、勝手に眉間に皺がよって、…いたしかたなく ソファに座った。
シグルドは自分の机に着いて、何かひどく細かい物を作っていたのだが、 作業を中断して茶をいれてくれた。シグルドはなにかと面倒見のいい男で、
いろいろなことによく気がつく。
…砂糖が入っていた。
「…ヒュウガがいなくて心配?」
「…別に。…私の茶碗に砂糖を入れるな。甘いじゃないか。」
「甘いと書いてうまいと読むんだ。」
「私とおまえは同じ味覚じゃないぞ。」
シグルドは少し笑った。
「…気持ちがほっとするんだよ、甘い物は。」
「…」
「そうイライラするなよ。」
「…」
二人は向かい合って、しばらく黙って茶を飲んだ。
ヒュウガはここのところしばらく何かをしきりと考えているようすで…またつまらない発明か、 さもなくば折畳み式のギアでも考えているのかと思っていたら、いきなり教官に申し出て、
ラボの使用許可をとって…こもってしまった。
むろんいつものようにかり出されての勤労奉仕ではないから、心配するには及ばない。だが…
「…ヒュウガどうしてるかな…」
察したらしく、シグルドが言った。
…察したのではなく、シグルドも同じ気持ちだった…そういう可能性もあったが、 なんとなく、察したのではないか…そういう感じがした。
「…あいつ、何やってるんだ?何か分解してるのか?つくってるのか?」
シグルドに尋ねてみた。…口調はどうしたことか、妙に攻撃的になってしまった。
シグルドは肩をすくめて、答にかえた。
いささか無礼だったことに反省しつつ、気をとりなおして、尋ねた。
「…お前は何作ってるんだ?」
「俺はね…」
シグルドは立ち上がって机のほうへ行き、作業中だったちいさな石片を持って来た。
「…軟石をみつけてさ。」
「アイテムショップで?」
「いや、オークション。」
「うーん?何彫ってるんだ?」
そう尋ねると、シグルドは彫りかけの小さな石を手渡してくれた。シグルドは手先が非常に器用で、しばしば模型だとか彫刻だとか、細かい工作にはげんでいる。出来上がりも悪くない。
さしだされた石は透き通った明るいピンク色をしていた。シグルドの体温で、指の先ほどの大きさしかない石は温まっている。
色に相応しい、丸い可愛い花を彫っているらしかった。
「…可愛い彼女が出来たという風情だな。」
「そんなことはない。…ただ石がとてもいい色だったものだから。…お前とは違うよ。」
最後の一言に、ちくり、とささるものがあった。
「…文句があるのか?」
「…別に。でも、味覚に限らず、ひとそれぞれだよな。」
彫りかけの石をシグルドに返す。
「…出来上がったら誰か女にやればいい。喜ばれる。」
「…誰にやるかは私がきめることだね。」
「ああ、もちろん。」
「…暇なら一回しない?」
唐突にシグルドに言われて、一瞬返事につまった。
「…作業中で忙しいんじゃないのか?おまえ…。」
「いいよ別に。…一本抜けばおちつくんじゃないの? それとも、ヒュウガを滅茶苦茶やらなきゃ、落ち着かない?」
「…」
シグルドの真意を計りかねて、返事がでてこなかった。
「イヤなら無理にとは言わないけど。」
「…嫌じゃないさ、別に。」
「そう?じゃ…ここでいいよね。」
シグルドは彫りかけの石の花をテーブルのカップの隣に並べて置き、 それから、まるで女をダンスにさそうときのように手を差し出した。
…ときどき、こいつらは俺のことを何だと思っているんだろう、と不審に思う。
ヒュウガなぞはまだ好き勝手にふりまわしてくれるが、シグルドとなると、 明らかに、機嫌をとってくれている気配がした。
…それも、どうしようもない子供としてご機嫌うかがいされているような。
手をとって側に寄ると、シグルドは背中に手を回して来て、首筋に口づけた。
シグルドの柔らかい髪に指をさしいれ、髪をすくように、頭を撫でる。シグルドの顔に触る。 …シグルドの褐色の肌はしっとりとなめらかで、肌理が細かい。今まで関係を持った相手の中で
一番手触りがいい。唇を探りあてると、指を口に含まれて、しゃぶられた。…柔らかい舌がちゅぷちゅぷ と音をたてて、指にからんできた。
シグルドの両手がそっと両頬をつつむ。壊れそうなものを愛おしむようにその手はすべり、 衿を開く。シグルドは仰向けになる形でソファに横になる。…ひっぱられて、シグルドの上に倒れ込む。
性の遊びというよりは、何だか別の営みのようだ、といつも思う。 …だからなのかそれほど後ろめたいと思った事もないし、 勇気が要ると思った事もない。…ただ、ある意味恥ずかしい気は、少し、した。
脱がされかかった上着を体にまとわりつかせたまま、今度は下半身に手が及ぶ。 肌が欲しくてシグルドを脱がせると、褐色の体が震えた。シグルドの胸に頬をおしつけて、
その桜色の乳首をピアスごと指の腹で撫でた。シグルドは下着の中に手をさしいれてきて、 後ろの丸みを撫でまわしたり揉んだりしている。シグルドの乳首をピアスごと口に含んでみる。…男にそんなことしたからどうだというものではないが…
なんとなく、目の前にあると、そうしたくなるのだ。
息が熱くなる。
シグルドの手が自分の下着の中で蠢く。そのいじりかたには独特の癖がある。それは一気にこちらをあおるような質のものではなくて…とろとろと少しずつ溶かしていくような…。性的な昂揚というより不思議な安堵をもたらすようなもので…それでも気がつくと、どこまでも突き破って進めると思えるほどに体は猛っている。
抱き合うときにどちらが男役かなどと決めてはいない。男同士でいるときに自分が男だなんてことはたいてい忘れていた。人間ですらないのに男だとでもいうのか?…ときにはシグルドの黒い長いしなやかなものに我を忘れて突き上げられ、そうでない日は気絶しそうなほどシグルドの中を突き進み…それで大して不都合もない。…今はシグルドまかせにしていたら、シグルドの上で騎上位をやらされた。
とんでもなく痛いのだが、この馬鹿げた格好が嫌いではなかった。シグルドに馬乗りになってまるでそれは一見征服しているようでありながらその実、屈服しているように腹を見せて横たわる男のピアスのついた性器に犯されている…その倒錯感が酔わせてくれる。ずぶりずぶりと肉の棒がはめられたあとは、動きもせずにじっと止まる。まるでいたわるかのようにさらさらと胸や腹を、シグルドの手がすべっていく。シグルドはいつでもとても優しい。こんな格好をさせて、黒い黒い肉棒で刺し殺しながら…たまらなく優しい。
「…カールは大理石の彫り物みたいだな…あったかい大理石…。」
シグルドはそう言うと足を掴んだ。そして膝を立てるように促した。
「…ま…まてよそれは…」
「カール…そっちに掴まって…」
「あっ…はあっ…あうっ…うっ…」
「変な声出すなよ…イッちゃうじゃないか…ばか。」
「ああっ…あ、い…痛…っ…。」
無理矢理膝を立てさせられた。そのうえシグルドは掴んだままの足を、自分の肩の上に片方ずつ載せようとしている。めりっ…とイヤな感覚があってシグルドが更に深く入ってしまう。
「カール…いいかんじ…すごく…」
「やめろ…ああっ!!」
アンバランスなポーズをとらされて後ろに反り返って片手で椅子の背もたれに掴まって残りの片手は下について、両足はシグルドの肩のほうにひっぱられて…手足には脱ぎかけの服がひっかかったまま…むき出しの下腹の柔らかな茂みからは天を向いて立ち上がる自分。後ろの穴には黒い肌の男のもっとも黒い部分がにょっきりささりこんでいる。
「シ…シグルド、足…足はちょっと無理かもしれない。」
「ん…?駄目?」
するとシグルドは一旦結合部分をほどいた。…シグルドが抜けたあとに、奇妙な感覚が残る。妙に弛緩したようなけだるい感じ。
「シグルド…」
「…欲しい?」
「シグルド…」
「ここにいるよ、カール」
くちづけあう。体を入れ替えて、シグルドの肌が上から温かく体を押し包む。思わず足を絡める。太腿にあたる互いの硬い肉。その濡れた熱。先端を噛む金属片もまた、熱い。
「…欲しい?」
「…ああ。」
「…久しぶりだね、こんなふうに二人ですんの。」
「…ああ。」
「…何話してるかわかってる?」
「…ああ…あ、うん…」
「…もー。」
シグルドが身を離し、仰向けに寝ている足を掴んで折り曲げた。膝が胸のあたりに着き、さらに押されて、腰を浮かされる。そしてその下にシグルドはクッションを押し込んだ。
「…カールのすごい元気だね。」
足をめくったついでに間に顔をよせ、それをぞろりと舐め上げる。掴まれかままの足を下ろそうとしても、掴んだ黒い手が動くことを許さない。乾いた皮膚を長く舐め上げる音が2度、3度とくりかえす。腰がびくっ、びくっと勝手に反応した。
「…ん…ほんといい子なんだから…カールのこの子は…」
シグルドは根元のほうから先へ向かって何度も何度も舐め上げた。舐められた部分はシグルドの唾液に濡れて次第に音が変わってくる。そして舐め上げるスピードはくり返すほどに早くなり、舐め回されたそれは筋を立てて自らも先端から濡れていく。
「…シグルド…」
「…なに?…ん…」
シグルドはその先端をぺロリと舐めとった。びりっ、と刺激が背筋を駆け上がる。シグルドは何か小声でささやきかけてから、口のなかにモノを入れた。舌がぐるぐる口の中で動く。片方の手を足から離し、根元のほうを掴むようにして激しくこすった。
自分の息がはあっ、はあっ、と響くのがひどく他人ごとのように聞こえた。
シグルドは口をはずし、手をとめると、それに頬擦りしてささやいた。
「…カール…ん、…いい子だね…カール。」
「…わたしはこっちだ。」
「…じゃあこれは? 」
「…それは…」
二人で子供のように拙い名称でそれを幾通りにも呼び合い、興奮して笑い合った。
「…そんなもんいじってないで早くハメろ。」
「もっといじってほしいくせに…」
そう言いながら指をずぶずぶ突っ込んできた。
「はあっ…あ…」
「もっともっといじりまくってほしいくせに…自分の体がグチュグチュいう音きいたり、甘えてあんあん言ったりしたいくせに。俺にのっかってゆさゆさゆすぶられたいくせに。俺にもっとあちこち舐め回してほしいくせに。俺に尻揉まれたいくせに。俺のアレ口に突っ込まれたいくせに。」
中で指がぐにぐに動いた。
「…ああ、うん、…もっと…もっといじってほしい…」
笑って言うと、シグルドも下品な声で長く笑いをひきずった。そして手はもっと激しく、今度は突いてきた。
掴まれたままの片足は握りしめられて痛いほどだ。ぐいっと更にまた押される。…足の間のものが全てシグルドの前に晒される。その馬鹿げたポーズが、楽しい。…開放感があった。
「正直にはっきり言うんだよ?どっちいじってほしい?中?外?」
シグルドは笑いながら少し高慢に尋ねた。
「…はっきり?…うーむ…中にはアレ入れて、外はこすってほしい。」
そう答えて笑うと、シグルドは首をふった。
「だめだめ、はっきりって言っただろ?中には何いれるって? 」
「…それは…」
今度はアダルト雑誌に良く出てくるそれの名称を次々に言いあった。シグルドの笑いは痙攣的になり、止まらなくなった。
「…あと、お前の顔にかけたい。」
のしかかったまま笑い狂ってるシグルドの頭を強く掴んでおさえ、狙いを定めると、シグルドは目を閉じて女のように腰をしならせた。
「…イ・ヤv」
「…かかったのを指ですくってお前の口にいれたい。」
「…おえ〜、のんじゃうかも、ごっくん。」
「…目のあたりにかかったら嘗めとってやるよ…」
「そんなことで優しい声だすなよ〜ヘンタイ〜」
二人ははじけたように笑った。そしてお互いに手を離し、…そっと繋がり合った。シグルドの眉をひそめたような真剣な顔を見つめながら、クッションの上で腰を踊らせた。シグルドを飲み込んでいる部分が、かすかに濡れた音をたてているのを耳をすまして聞いた。自分のモノに手を伸ばすと、シグルドの手と重なった。
「…いい子だねカール…」
シグルドはもう一度うっとりとそう呟き、そのあと二人は息を合わせてのぼりつめた。
はりつめたシグルドが中ではじけたとき自分のモノがシグルドの腹の近くで白い濁りを飛ばすのを見つめて…今日はいいタイミングだな、などと爛れた事を思ったが、何故かいつでも、シグルドとしているときは、汚れた精神疲労は感じなかった。
「一本抜く」だけの予定だったが、体に興奮が残っていて、そのあとやすみやすみ結局お互いさらに2回ずつイッた。一回はお互いのモノを舐めあって、そのままイッた。お互い口でするのは男女のふりをして結合するより負担がかからないから、この部屋ではよく行われた。受けるほうが上手ければ周囲もよごれない。そのあとシグルドの精液を飲み下して、さらにシグルドの顔についた自分の精液をなめているうちに、勢いがついてシグルドのたまらない肌を体中思いきりなめまわしてしまった。意外なことにその行為は激しい興奮と陶酔をもたらし、それがシグルドにも飛び火して、シグルドは隣室を危惧するほどの悶え声を上げた。椅子にうずくまるシグルドの尻を持ち上げて、最後は床に立って犯した。夢中で掘りまくってシグルドの中に出したあと気がついたら、シグルドも椅子の防水布に白い液をまき散らしていた。
流石に疲れて、あちこちの汚れを拭い、シャワー室をかわるがわる使い、別々のベッドで眠った。
翌朝部屋をかたづけていると、ヒュウガがクマのあるしかし爛々と元気な顔で部屋に帰って来た。
「あ、お帰りヒュウガ。」
シグルドが近付くと、ヒュウガはシグルドにうきゅーと抱き着いて
「ただいま帰りました〜vvv」
と言うなりシグルドの唇を奪って長々と糸をひくほどディープキスをした。
「…また朝っぱらからお前はそういう…」
とイヤな顔をして小言を言うと、今度はシグルドを離して近付いてきて、…襲われるか?!と身構えたところで、持っていた紙袋をこちらに差し出した。
「…?」
「…間に合いました。誕生日おめでとう!」
びっくりした。…というのはカーラン・ラムサスの誕生日はベッカ−のもので、まったく自分の誕生日として意識できていなかった、というのもあったし、…もちろんその日が今日だというのも忘れていたからだった。
「あけてみて!」
ヒュウガが可愛い顔(珍しく)でにこにこして言うので、紙袋を開けてみると、小さなかわいい円盤型のモップロボットが入っていた。自動制御のやつだ。自分で埃を探して、綺麗にする。
「あなた机の上いつもとても綺麗にしておくでしょ。だからお掃除につかってください! モトは市販の組み立てキットですけど、いろいろ改良してあなたの机から下におちないようにしてあります。…それと、リモコンでも使えるようにしてあります。これがリモコン。」
「…これを作ってたのか…」
「…ええ、他にもいろいろついでありましたけど…まあそうです。」
「…動かしてみよう。」
二人で机の方に移動するとシグルドもついてきた。
机の上にスイッチを入れたモップロボットを置くと、ロボットは軽い「ふぃー」というような音を立てて、ゆっくり動きはじめた。薄い汚れのところでとまると、くるくる回った。通りすぎると、綺麗になっている。
「へー、すごいじゃない。」
シグルドが感心して言うと、ヒュウガは得意げに説明した。
「洗剤3種類と水、それに研摩用のスポンジも持ってて、必要に応じて使い分けているんですよ。」
そんなヒュウガにうなづいた。
「すごいな、こんなに小さいのに。」
「もちろん床におけば床掃除もしますよ。」
「…動きがなんとも言えずかわいいな。小さい動物みたいだ。」
「気に入ってくれたみたいで嬉しいですv」
ヒュウガは嬉しそうに言ってチュッとひとつやると、伸びをしながらシャワー室の方にあるいて行った。
シグルドと二人で、しばらくリモコンをいじってロボットで遊んだ。
シャワーを浴びたヒュウガはやがて服を着替えて戻っきた。
「二人とも食事は?」
「いや、まだだよ。」
「そう。じゃ一緒に行きませんか?」
「ああ、そうしよう。」
ロボットを拾い上げて裏返し、スイッチをさがしていると、ヒュウガがシグルドに言った。
「…そっちは間に合いました?」
するとシグルドは肩を竦めた。
「いや。アウト。」
「あらら。」
「でもいーよね、カール。昨日俺いっぱいお祝したから。カールはああいうのも後腐れないプレゼントでいいだろ?」
シグルドがそう言ったのでいささか呆れて尋ねた。
「あれ誕生祝いだったのか。」
「…ということにしといてくれ。」
「…まあいいけどな。お世話様。…なんかくれる予定だっ…?」
言いかけて、あっ、と思った。
シグルドがちょっと上のほうに目をやった。しまった、と思った。
「…いいんですかシグルド。高かったんでしょ、あの石。…少し遅くなってもいいんじゃないですか?」
ヒュウガが言った。
「うーん?…まあ来年は俺がラボか工作室にでもこもってやるかな。」
シグルドはそう応えて笑った。
謝る隙は与えずに、シグルドは方向転換して言った。
「食堂いこうよ、腹減った。」
…優しいのだろうか。わずらわしいのだろうか。
…謝ってほしくないらしい。
気が散ってロボットのスイッチが見つからなくて慌てていると、ヒュウガが手をのばして切ってくれた。
「…カールにあげないなら私がほしいなあ。」
ヒュウガが言うと、シグルドは振り返った。
「…んじゃ今夜はヒュウガをイヤイヤ言わせて3〜4回イカすかな〜。」
「どういう意味ですかもう。…いきましょ、カール。」
「…シグルド、一つ聞いていいか?」
そう言うと、シグルドはじっと顔をみつめた。…やはり、あまりよくなさそうだった。
それでも言ってみた。
「…すまん。…だが…いや…おまえ、私のことどういうイメージなんだ?」
きいてみて、自分で困惑した。何かとんでもないことを答えられそうな予感がした。
すると突然、横合いからヒュウガが背伸びして耳にささやきかけてきた。
ヒュウガが密告したそのイメージは昨日シグルドが作っていたものに大変良く似たもので…きいたはいいが、困って…もてあました。「ばかかおまえは」と言いたいところだったが、さすがに申し訳なくて言えなかった。
するとシグルドは「あはは」と笑った。…笑って、終わらせた。
…それならば。きかなかったことにするのがいいのだろうな…と思った。
シグルドは優しいからケンカしたくないのだろうか、それともどうでもいいからケンカしたくないのだろうか、と、少しだけ思った。
そう思うとひどく寂しくなったので、思わなかったことにした。
とりあえず3人仲良く、朝食にでかけることにした。
ヒュウガはシグルドの腕にまとわりついてその後もまだ彫刻の続きをやらせようとしていた。
その彫刻が結局どうなったのか…カーラン・ラムサスは知らない。