「…ヒュウ…」
「すみませんでした…連絡ひとつしないで」
少しやつれたような顔で、それでも日向は笑った。
姿を見た途端、声を聞いた途端、カーランの頭の中は真っ白になっていた。
言葉が出てこなくて、焦れたように彼は腕を伸ばして日向を抱き締めた。
もとから細い体の背中は、また少し痩せたような気がした。
「…カールの匂いだ」
日向はポツリと呟いて、頬をカーランの肩に擦り付けた。
カーランは言葉もなくきつく日向を抱き締めて、何度と無く背中を撫でた。
そっと日向の手がカーランの顎をとらえ、至近距離で顔を覗き込む。
「目、真っ赤ですよ…?泣いてたんですか?」
ウサギみたいだ、と言って腕の中で背伸びした日向は、カーランの目の縁に唇を押し付け、そのまま一度軽く唇に触れて、軽く微笑んだ。「…日向」
うめくようにカーランは呟き、日向を抱き寄せて玄関に入れるとドアを閉めて鍵をかけた。すぐに帰るつもりで来たのかもしれなかったのだが、そんなことを考えてやるだけの余裕はカーランには無かった。
閉じたドアに日向を押しつけて、荒っぽいキスを繰り返した。唇だけでは飽き足らずに、日向の瞼や耳元、頬や首筋にも唇を落とす。
日向はおとなしくかき抱かれながら、カーランの金髪を撫でた。 抱擁が愛撫に変わっていくのを、日向は感じ取る。温かく心地よいカーランにいつまでも抱かれていたいのはやまやまだったのだが、日向は優しく体を離した。
「カール…」
「…う…ん?」
「私に、抱かせて下さい…今あなたに優しくされると…気が弱りそうだから」
ね?と日向は囁き、カーランの腰に腕を回す。
「ああ…」
頷くカーランに微笑んだ日向は靴を脱いで、玄関先の廊下に座り込んだ。
「…ここでか?」
「ええ」
ベッドのある寝室は廊下の突き当たりだから、歩いて10歩あるかないかなのだが、カーランもそこに膝をついた。今ここにある空気から離れてしまうのが惜しかった。 寝室はあれから一度も使われていない。キングサイズのベッドは一人で寝るには広すぎて、ひどく寂しい思いをしたからだ。冷たい廊下に、ゆっくりとカーランは仰向けに横になった。日向は上半身をカーランの胸に預けるように体を重ね、ついばむように唇を合わせながら、カーランの股間に手を伸ばす。
「…ん」
しばらくぶりの直接的な刺激に、ソレはカーラン自身が戸惑うほどの反応を示した。日向はひどく嬉しそうに微笑んで、柔らかな刺激を繰り返す。
「ん…んっ」
「声、出して下さいよ」
「だっ…こんなトコで…」
「平気ですよ…鍵もかけたし…」
「そりゃそう…ん、あっ」
「カール……」
窮屈になったジーンズを脱がせ、カーランの着ていたセーターを捲り上げる。白い肌が外気に触れて、一瞬カーランは身震いした。急角度で起ち上がったモノを手のひらでやわやわとつかんだまま、尖った乳首を日向は唇に含み、舌の先でつついた。もう片方も指先で軽く摘んで爪弾き、カーランの体をくねらせる。「…ふ…うん…っ」
日向は身を屈めて、緩く収縮を繰り返すカーランの菊座に舌を這わせる。
「う…」
「前はともかく、ダメですよ、他の人にココ使わせちゃ」
「…しない…っ!…に、ともかくって…、あ、やっ」
「前は別の生き物ですからね、不本意でも意志に反してても、使える時は使えちゃいますから」
日向は平然とそう言い、押しこんだ指先で内側の前立腺を刺激し、呼吸するように軽くうごめく裏側の袋を舌の先端で突つく。
「…っく…ぅ」
「あっ、あと尻尾のおもちゃとかもダメですよ?ひとりの時に使ったら」
「…んなことするか…!」
「なら結構」
きつい締まり具合でも確かめるように指先をぐるんと動かし、日向は猛ったモノのぬめった先端を当てる。
「ふ…」
侵入してくる日向に、カーランはみしっと体が軋んだような錯覚を起こす。引き裂くような痛みこそ無くなっても、異物には違いない。自分の内部がひくつきながら日向を目一杯受け入れているのを、カーランは十分自覚している。そしてその異物が、十分過ぎるくらいの快楽を与えてくれることも知っている。「あ、あ…日向」
「気持ちイイですねえ…カールの中」
狭くて熱くて溶けそうですよ、と日向は囁いた。
「ふ…っ、くぅ……、ぁん…」 甘い声を上げて、カーランは立てた膝を震わせながら日向を体内に受け入れた。狭く熱い内壁の締め付けに、日向は衝動を堪えるように目を閉じる。
規則正しい律動を送られながら、ふとカーランは腕を伸ばして日向の前髪に触れた。
「…日向」
「ん…?なんです?」
「……泣きたいなら、泣いていいぞ」
本当に何気なくカーランは言った。日向が泣きたがっているような、そんな気がしたのだ。
「……どうして、あなたは」
動くのを止めて、日向はそう呟いた。
カーランは普段『超』がつくほど鈍感なくせに、意外な時だけ変に敏感で、たいていそういう時彼が気づくのは、日向の一番隠したい感情だったりする。
「日向…?」
「…、もう知りません、カールなんか。壊れちゃいなさい」
「あ、おい…、ヒュウ…、あぅ、んんっ」
何故日向が怒ってしまったのかわからず、不意に激しくなった愛撫と律動に戸惑いながら、カーランは喉を反らせて声を上げた。